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松本新さんのこと

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★ 「当社元副社長・松本 新 あらた 様(享年92歳)におかれ ましては11月7日にご逝去されました。 ここに謹んでお知らせいたします。」という訃報が届いた。
本当にお世話になった松本新さんだっただけに、一度改めて当時のお礼をと思っていたのだが、その機会もなく逝ってしまわれたのである。
 KMCの経営危機で当時の単車事業本部は勿論、本体の川崎重工業まで、その影響で無配になってしまった当時、 松本新さんは本社の財務担当常務だったのである。
 川重本社はこのKMC対策のために2年間で500億円の資金を投入し、 その再建にあたったのだが、本社でその先頭に立たれたのが松本新さんなのである。 松本さんは第一勧銀から川重に来られたのだが、単車事業に非常に強い関心と愛情を持たれていて、 いろんな面で援けて頂いたのだが、当時単車に関わられたのは、財務対策・資金調達の面だったので、表に出ることは少なかったので、 当時の事業本部の殆どの方は松本さんのことはご存じないのだと思うのである。
 若しあの当時、本社の財務対策がなかったら「カワサキの二輪事業は終わってしまっていた」であろう、それほどの経営危機だったのである。
 当時は大庭浩本部長・高橋鐵郎副本部長の時代で私は企画室長だったので、 松本さんと直接関係があった窓口を務めたのである。
 手元に田崎さんが送ってくれたこんな写真があるが、 一番右が松本新さんである。 真ん中が高橋鐵郎さん、左は当時のKMC社長の田崎雅元さんである。
 


★ 当時の川崎重工業の取締役会では「KMC報告」なるものが 毎月議題にあり、その報告者は大庭本部長ではなく「松本常務」だったのである。 それは財務本部が500億円もの資金を投入した先のKMCの経営状況経過を毎月の取締役会に定例的に報告されるほど、「KMCの経営健全化」は川重本体にとっても大きな課題だったのである。
 この毎月の「KMCの経営報告」はKMCから企画室に送らた資料を 私が川重取締役会用に纏めて、松本さんに報告しそれを松本さんが財務担当報告者として取締役会に報告されていたのである。
 私はそんな担当をしていたので取締役会にも陪席していたし、 松本新さんとは親しくお話する機会も多かったのだが、 絶大の信頼を頂いて、いろんな面でお世話になったのである。 
★こんな経営健全化を進めている時期に、KMCの4か所にも分散していた社屋を本社を売却することで1か所に統合しようという案を提出した時には、 「赤字会社が」と監査役が反対されて、松本さんも立場上最初は反対されたのだが、 その内容をつぶさに説明すると理解を示されて、こんな立派なKMC社屋が建ったのである。


   それは今のIrvine がまだ開拓途上のころでサンタナの本社を売却することで こんな広大な土地が買えたのである。 これは工場などではなくて「事務所」なのである。 日本では考えられないような広さだが、 土地はサンタナの本社売却代で買えたし、本社建築費は18億円でできたのである。    

 たまたまNinja 900などの新車も出たし、 ジェットスキーの急激な拡販などもあって、 KMCの経営健全化は順調に進み、カワサキの二輪事業も安定期に入って行くのである。
 そんな一番のきっかけは何と言っても本社財務の500億円の資金投入であったことは間違いなく、 その大きな決断をされた「松本新さん」には、本当に感謝なのである。
 92歳のご高齢であったので、 天寿を全うされたというべきであろうが、 ここに改めて感謝の念を表したいと思うのである。 有難うございました。安らかにお眠りください。
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