★全国でバス事故が続いている。
安全運転が問われているが、日本の免許制度や安全運転教育に対しては私見ではあるが、運転技術を教える教習所などの教え方が、単に免許が取れる方向のみに偏っていて本来の安全な運転技術については、教える先生方がひょっとしたら基本的な安全テクニックをご存じないのではとずっと思っているのである。
★私が4輪の運転免許を取得したのは昭和40年6月17日である。
当時、私はカワサキのファクトリーレーシングチームのマネージメントを担当していて、私の周囲にはファクトリーライダーたちがいっぱいだったのである。
私が免許を取得した時、私に懇切丁寧に『運転技術』を教えてくれたのが山本隆くんである。
当時はあの星野一義もいて、星野も自分のクルマを持っていない18歳のころである。星野のお師匠さんが山本隆くんだから、私は星野などと一緒に山本隆の運転技術の講釈を聞かされたのである。
当時から『講釈師』とあだ名されていた山本隆の運転理論は、いまも私のクルマの安全運転に役立っているのである。
★レースはカーブのあるムツカシイコースを如何に速く走ることが求められるのだが、4輪でも2輪でも簡単にクラッシュするから、速く走ると同時に安全に走らなければ、レースの優勝などは難しいのだと思っている。
そういう意味でレーステクニックは、安全運転に通じると私は思っているのである。
当時山本隆くんが私にくちすっぱく教えてくれた安全運転のテクニックを以下に列挙する。
もし、今回のバス事故もこの様なことが守られていたら、起こっていなかったのは間違いないと思っている。
★クルマを運転される方は、ぜひ覚えておいて実践されることをお勧めする。
● 4輪でも2輪でも車が一番安定しているのは、アクセルを踏んいるときなのである。
● 逆にいちばん不安定なのは、ブレーキを踏んでいる時である。
これが運転の基本だと思うが教習場ではこんなことは教えない。
● 従って一番危険なカーブでは、アクセルを踏むべきで絶対にブレーキを踏んではならない。
● ブレーキは一番安全な直線で踏まなければならない。
● カーブでアクセルが踏めないような状態は、カーブに入るまでの速度が速すぎるのである。
● カーブに入る前の直線部分で充分に速度を落とし、カーブに入るとアクセルが踏める状態が一番安全なのである。(昔のクルマではそこでアクセルが踏めるギヤまで落としておく必要がある)これがレースで言う『スローインファーストアウト』なのである。
● カーブでアクセルなど踏めないと仰る方は、その前の直線部分で速度を落とし切れていないのである。カーブに入るスピードが速すぎるのである。
今回のバス事故もカーブに入ってブレーキなど踏んでいるので、基本的なことが出来ていない。スローインになっていないのである。
● もう一つのカーブの鉄則が『アウトインアウト』だがこれは出来るだけカーブを緩くするための鉄則なのである。
こんなレーステクニックのほかに、ブレーキは直線でしか踏まないような安全な運転をすべきだが、ブレーキを踏むときには必ず『バックミラーを見て後続状況を確認』しなければならない。交差点でおかまを掘られるのは、後ろの状況確認が出来ていないからだと思う。ブレーキを安全に踏む時には後ろの状況確認はMUST なのである。
★道路で一番危険な場所=カーブ それも下りのカーブは一番危ない。そんな下りのカーブでもブレーキを踏まずにアクセルを踏みながら走れるような状況なら、それは間違いなく『安全運転』なのである。
こんな山本隆くん直伝の運転テクニックが一番役に立ったのは東北や北海道で過ごした冬の雪道、峠道である。雪の峠道でブレーキを踏んだりしたら、車はすぐ横を向いてしまう。
東北、北海道の6年間の雪道を楽しく安全に走れたのは、まさにこんな基本的な運転テクニックを知っていたからである。
サーキット走行は危険いっぱいで死者もでたりするのだが、SPA直入はスタート以来死者の出ていない珍しいサーキットである。このサーキットを造ったのは故岩崎茂樹と私、カワサキのファクトリーチームを担当し、レースや安全関連の知識があったから、一般ライダーの走行が多いサーキットだからカーブは登りにセットしているし、コース幅も鈴鹿と同じだし、安全地帯も鈴鹿以上に広く取っているのである。
★下りカーブでスピードが出過ぎで、カーブでブレーキを踏んだりする、バスの運転手は問題外だとは思うが、上述したような運転技術の基本みたいなものを、教習場でもバス会社でも教えて欲しいと思うのだが・・・そんな理論をご存じないのだと思う。
ちなみに山本隆君は、もう30年も前の話だが、東北6県の警察の白バイ隊員の運転技術講習を頼まれて非常に実践的で好評であったことを思いだす。
彼は72才のいまもトライアルなどの競技が楽しめるのも、実戦的な理論家、講釈師だからと云えないこともないと思っている。