★今年の夏の甲子園は第100回の記念大会だったが、大阪桐蔭の2回目の春夏優勝という結果に終わった。
終わってみれば、大阪桐蔭の強さは素晴らしかったと思うが、話題を独占したのは秋田の金足農業だったし、吉田輝星投手だった。
高校野球の良さを金足農業はみんな備えていた。
公立高校で地元中学の出身者ばかり、秋田の予選から吉田投手は1人で投げ切ってきた。先発メンバーは予選から一度も変わらなかった。レギュラーはみんな3年生、ベンチにいるのは2年生。今どきこんな野球をするチームは少ないが、これが話題になり、関心を呼んだ。
横浜高校・日大三高という甲子園の常連校を吉田投手は抑え切ったし、近江校との一戦の『ノーアウト満塁からのサヨナラツーランスクイズ 』 は見事であった。
何よりも『吉田輝星』が注目を集めた。
素人が観ても解るあの真っ直ぐの素晴らしさ・美しさ。一人で投げ続けてきたが決勝戦で大阪桐蔭の前に散ったのである。
こんな『侍ポーズ』が話題になり、高野連がそれを禁止したりしたので、さらに話題になったりした。
侍ポーズとは『吉田投手とセンターの大友選手が見せるルーティンワーク』のことで、守備に就く際、マウンドとセンターでタイミングを合わせ、刀を抜くポーズをキメる動きのことを指していて、金足農業の快進撃も手伝い「侍ポーズ」は一種の名物になっていたが、高野連は侍ポーズの自粛を要請。
自粛を通達された後の準決勝では “控えめな侍ポーズ” を決める吉田選手が話題になったというのである。
高野連に『自粛の要請』の理由を聞くと、
「高校野球では “野球とは関係ないパフォーマンス” は不必要で、侍ポーズは野球とは関係ありませんので、今回の侍ポーズはそれにふさわしくないという判断をいたしました」というのだが、もう一つ『すっきりしない』のである。
『パフォーマンス』というなら、こちらの『全力校歌』は、なぜ自粛要請は出なかったのかなと思ったりする。
この『全力校歌』も 金足農業独特で、決勝戦でもう一度見たかったのだが・・・・
★それは兎も角、
秋田県勢103年ぶりの決勝に導いた吉田は、秋田大会から準決勝まで10試合連続の完投で1385球を投げて来たのだが、決勝では大阪桐蔭に5回までに132球を投げたが、12失点で降板したのである。
秋田大会を含めると11試合で1517球を投げたことになる。多くの野球ファンの胸を打った『一人エースの力投』だが、その一方では球児の健康や故障リスクを懸念した有識者の間では『球数制限』などの意見が出たようで、来月3日から宮崎で開催される「第12回BFA U18アジア選手権」では球数制限が採用されることが決まったというのだが、各チームの選手を預かってやるU18ではそれもいいが、部員が10人程度のチームもある公立高校でできるのか?
金足農のコーチは「球数制限には反対。限られた戦力の中で勝負しなければならない状況で、公立校で3人も4人も継投できる投手を確保するのは現実的に難しい。」
複数投手の継投で勝ち上がってきた日大三も「制限を設けるのは反対。高校野球は教育の一環。今大会で言えば、吉田君の気迫や、一人でマウンドを守り抜くエースを仲間が助けようとする姿に、多くの人が心を揺さぶられ感じるものがあったのではないでしょうか。・・」
これらの現場の意見が正論で、球数制限を設ければ、強豪私学がますます強くなる傾向に拍車がかかるのは目に見えている。
それよりも高校野球の本来の姿に戻った『野球留学などの制限』などを100回大会を機に高野連も検討されるべきではと思う。
今年甲子園に100万人のファンが集まったのは、『秋田の公立校金足農業の躍進や吉田輝星くんなどの熱投』によるもので、大阪桐蔭が強かったからではない。いずれにしても、甲子園の話題を独占した『秋田金足農業』だったし『吉田輝星くん』だったのである。
来月3日からのU18では、球数制限の中で熱投する吉田輝星くんを見たいものである。